汁ものの出し、花かつおと四季を通じて日本人の食卓には欠かせない存在。江戸っ子が珍重したという初ガツオが上がると市場は一気に活気づく。この季節のカツオなら、まずはたたきにして食し、旬の気分を満喫したいもの。北上したカツオが三陸沖から逆もどりしてくると「もどりカツオ」と呼ばれる。こちらも近ごろ人気上昇中。釣れたばかりなら刺身にして豪快に食したい。トロッと脂がのっていてマグロ並みのおいしさ。しょうゆのたれで、薬味はにんにく、あさつきのみじん切りがあればよし。残った身は酒少々としょうゆを合わせたものに数分漬け込んでおき、お茶漬けにする。これが一番という人もいるほど、満腹を忘れる味。
一口大に切ったカツオを醤油にたっぷりと漬けてから、温かい御飯の上にのせ、すぐさま沸騰したお湯をかけ、のり・きりごま・わさびなどをのせていただく。さっぱりとしていてお酒の後にはまた格別。
ガイナモンジャニャー
(すごいものだね)
(例)ガイナモンジャニャー、コリャー
すごいものだね、これは
かしき落ち
紀伊長島区の三浦地区に高塚という海に突き出た半島があります。この半島の一番先の部分を瀬島といいますが、そこに切りたった断崖があり「かしき落ち」と呼ばれています。
ずっと昔のことですが、かしきをしていた若い漁夫が燃料にする雑木をとりにきてここから足をふみすべらせ落ちて死んだそうです。ところがそれからというものは、この断崖の下あたりを舟で通る漁師たちが「腹がへったにゃ。」というと、メッパ(弁当箱)が流れてくるし、「水がのみたいにゃ。」というと、水の一杯はいった竹筒が流れてくるのです。
しかも、その流れてきたものを喜んで食べたり、飲んだりしようものなら、舟が漁を終わって戻るまでに手をつけた者は、かならず水に落ちたり、けがをしたり、なにか命にかかわる災難に見舞われたのだそうです。そんなことが続くと漁師たちはいつしかこの崖を「かしき落ち」と呼んでこわがるようになりましたので、三浦の金蔵寺の和尚さんが、ありがたい経文をその瀬島の「かしき落ち」と呼ばれている断崖の上の広まった場所にうめ、その上に杉を植えたのです。
それからというものは、ぷっつりと海上での不思議はなくなったということです。杉はすくすくと育って、大木になりました。ある人が、あまり茂ってきたので枝打ちをしてやろうと枝をはらい落としたところ、切り口から鮮血がほとばしり出てきたのでおどろいて逃げかえりました。その杉は、傷をつけただけでも赤い血がにじみ出る不思議な杉だったのです。ですから何百年かたった今なおこの杉の巨木は、瀬島のいただき近くで枝葉をいっぱいに茂らせて潮風にそよいでいるというわけです。