■干物造りを始めるきっかけ
それではまず、簡単な自己紹介からお願いします。
紀伊長島で干物の製造・販売を行っています。上野和寿と言います。今年で37歳になります。店舗は家族と数名のスタッフで経営しています。
この仕事は何歳から始めましたか?
確か、21か22歳になったころだと思います。それまでは、愛知の方で勤めていました。自動車の金型を作る会社です。
今のお仕事とは全然違いますね。
そうですね。絶対に継ぐものかと思っていたので、違う仕事を自然に選んでいました(笑)。
継ぐつもりがなかったお店ですが、帰るきっかけは何だったのでしょうか。
ちょうど勤めていた会社を辞めようかと迷っていた時に、実家から帰ってこいという連絡があったので戻ってきたんです。本当はちょっとのつもりだったんですが、いつの間にかずっといることになってしまいました(笑)。
■1日5,000枚!
1日の仕事の流れはどんな感じですか。
朝は市場に行って魚を競り落とします。魚は工場に運び、干物に加工します。今の時期だと「カマス、アジ、うるめ」などを主に扱っています。加工を行うのは、私と女性スタッフ2名。この3人で1日5時間くらい作業を行って、およそ2,000~3,000匹の魚をさばきます。
5時間で2,000~3,000匹!大体30秒で1匹さばく計算ですね…。
慣れてくると手が勝手に動いてる感じなんです。手元を見なくてもいつの間にかさばかれてる。ただ、手開きだとこのくらいが限界で、これ以上やろうとすると体を壊します(笑)。
手開きにこだわるのは?
何より美味しさが違います。機械でさばくとどうしても本当にいいところを残せないんです。あと、手開きだとロスがほとんど出ないんですよ。
他にこだわっていることは?
その日仕入れた魚は必ずその日のうちに加工すること。やはり鮮度が大事なので。ただ、産地の違う魚などは一旦冷凍庫で保管して、加工します。
それから塩にはこだわっています。塩の味と加減は干物の味に直接に関係しますので。お客様の好みに合わせて塩加減を変えたりすることもあります。
今後の目標やビジョンを聞かせてください。
儲けたいです(笑)。そのために、ここでしか食べられないというものを確立したいですね。干物はどこにでもあるものですが、その中でもここしかないという強みを作っていきたいと考えています。
■美味しい干物のワンポイント!
干物を作る時に一番重要なのが、塩加減です。慣れていない方は、薄めの塩水にしっかりと漬けるのがポイントです。2.5%くらいの塩水(1リットルの水に25gの塩を溶かす)を冷蔵庫で一晩冷やし、開いた魚をつけてさらに一晩置きます。後は水洗いして、洗濯バサミなどで干しておけば完成です。干し加減は身の固さを見て調整してください。開いた魚は身を閉じないようにして干さないと、中身が乾かないので注意してください。
朝とれひもの屋 上野商店
http://uenoshouten.com/